保安林の制限

 立木の伐採に関しては都道府県知事への届出(一部については

許可)が必要となる。具体的には、皆伐は皆伐限度面積の公表の

日から30日以内に許可申請が必要となり、択伐は伐採を開始す

る日の30日前までに許可申請し、人工林での択伐は伐採を開始

する日の90日から20日前までに届出する必要がある。間伐に

は伐採を開始する日の90日から20日前までに届出する必要があ

る。家畜の放牧、下草・落葉・土石‣樹根の採取、土地の形質の

変更(掘削、盛土等)については都道府県知事の事前の許可が必

要である。保安林を造成して住宅を建てるなど将来にわたって森

林以外の他の用途に転用する行為は、許可されない。立木の伐採 

後に森林状態に自然回復しない場合は、植栽の義務がある。一方

で保安林の土地の売買には制限はなく市町村長への届出が必要で

ある。立木の伐採の強度や伐採後の植栽の方法等に関しては、保

安林に指定される際、森林毎に要件が定められる。制限に反した

行為をした場合には、森林法第38条に基づく、中止命令・造林

命令・復旧命令・植栽命令の監督処分を行い、森林法第206条

~210条、212条による罰則がある。

  以上。

保安林の特例措置

 保安林に指定されると規制内容に応じて優遇される。森林法第

35条に基づいて、禁伐または択伐の伐採制限が課せられる保安

林については、立木資産の凍結に対する利子相当分の損失補償を

受けられる。固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は非課

税になる。相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じ課税額の3~

8割が控除される。一定の条件の下、保安林維持の為に、日本政

策金融公庫から長期で低利に融資を得ることができる。

保安林の解除

 保安林の指定目的が消滅したとき(例:保全対象の集落、農地

が消滅するなど)公益上の理由(例:公共用道路の建設、送電施

設の設置など)が生じたときに限り解除される。この際、必要に

応じて代替施設の設置などを求められることがある。民間企業が

営利目的で解除を行うことは事実上不可能である。

農林水産大臣は、保安林の指定又は解除をしようとするときは、

あらかじめその保安林予定森林都道府県知事に通知しなければな

らない(法29条)

  以上。

保安林の指定

 農林水産大臣または都道府県知事が森林法第25条、25条の

2,27条~33条に基づき保安林として指定する。この場合、

森林とは木竹の生育に供される土地を指し、現時点で生育してい

るか否かは問われない。

  以上。

保安林の面積

 2016年3月現在、重複指定を排除した実面積で1,292万

ha。これは森林面積の48.5%、国土面積でも32.2%に相当

する。指定される保安林の多くは、水源涵養保安林が保安林全体の

71.1%、土砂流出防備保安林が保安林全体の20%を占める。

  以上。

保安林とは

 保安林(ほあんりん)は、水を育んだり、土砂崩れなどの災害

を防止したり、景観や保健教養などの公益目的を達成するために

、伐採や開発に制限を加える森林のことである。目的に合わせて

17種の保安林がある。

①水源涵養保安林

  森林には、降った雨を蓄えて、徐々に河川などに流すように

 する働きがある。

②土砂流出防備保安林

  森林内の地面を、樹木の根と落ち葉や下草が覆うことで、雨

 などによって表土が流されることを防いでいる。また水流によ

 って表土が流された時に、土砂がさらに下流まで流出すること

 を防ぐ。

③土砂崩壊防備保安林

  林木の根が、土や岩を繋ぎとめる物理的な力で、山崩れが起

 こることを防ぐ。

④飛砂防備保安林

  砂浜などから飛んでくる砂を防ぎ、隣にある田畑や住宅を守

 る。海岸の砂地を森林で覆って砂が飛んでいかないようにする

 場合と、樹木で飛んできた砂を遮断する場合とがある。

⑤防風保安林

  風の強い地域で、樹木の幹や枝葉で障壁を作って風に抵抗し

 、風のエネルギーを減殺して風速を緩和することで、被害を防

 ぐ。

⑥水害防備保安林

  河川が氾濫したときに、樹木が障害となって水の流れを弱め

 、また漂流物を堰き止めて水害の被害を軽減する。

⑦潮害防備保安林

  津波や高潮の勢いを樹木によって弱め、被害を防ぐ。また、

 海岸からの塩分を含んだ風を弱め、枝葉によって塩分を捕捉し

 て田畑への塩害を防ぐ。

⑧干害防備保安林

  簡易水道などの、特定の水源を守り、水が涸れることを防ぐ

 。

⑨防雪保安林

  樹木の幹や枝葉によって障壁をつくって、吹雪から道路など

 を守る。

⑩防霧保安林

  森林によって空気の流れを乱れさせることで、霧が移動する

 ことを防ぎ、また樹木の枝葉によって霧粒を捕捉して霧の被害

 を防ぐ。

⑪なだれ防止保安林

  森林によって雪崩の原因となる雪庇ができることを防ぐ。山

 腹斜面で樹木が抵抗して雪が滑り出すことを防ぎ、雪崩の発生

 を防止する。雪崩が発生した時には、森林が障害となって勢い

 を弱め、また被害の少ない方向へ誘導して被害を防ぐ。

⑫落石防止保安林

  樹木の根で岩石を繋ぎとめて固定し、崩壊を防ぐ。また発生

 した落石を山腹で阻止し被害を防止する。

⑬防火保安林

  燃えにくい樹種を配置して防火樹帯をつくって、火災のとき

 に延焼することを防ぐ。

⑭魚つき保安林

  水面に陰をつくったり、流れ込む水の汚濁を防いだり、養分

 の供給などの働きで、魚の棲息と繁殖を助ける。

⑮航行目標保安林

  海岸または湖岸の付近にあって、船舶の航行の目標となる森

 林を保全して、安全に船舶が航行できるようにする。

⑯保健保安林

  森林レクリエーション等の保険、休養の場として、生活にゆ

 とりを提供する。また、空気の清浄や騒音の緩和など生活環境

 の保全にも役立つ。

⑰風致保安林

  名所や旧跡などの趣のある景色を構成する要因となっている

 森林を保存する。

  以上。

  

(4)許可基準

 都道府県知事は、許可の申請があった場合において、次のいず

れにも該当しないと認めるときは、これを許可しなければならな

いとされています。

ア)当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防

  止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地

  域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるお

  それがあること(災害の防止)

イ)当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能から

  見て、当該開発行為により当該機能に依存する地域における

  水害を発生させるおそれがあること(水害の防止)

ウ)当該開発行為をする森林の現に有する水源の涵養の機能から

  みて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における

  水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがあること(水の確保)

エ)当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能から

  みて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環

  境を著しく悪化させるおそれがあること(環境の保全)

  以上。

(3)許可権者

 開発行為をしようとする者は、農林水産省令で定める手続に従

い、都道府県知事の許可(自治事務)を受けなければなりません。

  以上。

(2)許可制の対象となる開発行為

 許可制度の対象となる開発行為は、土石又は樹根の採掘、開墾

その他の土地の形質を変更する行為であって、次の規模をこえる

ものです。

ア)専ら道路の新設又は改築を目的とする行為でその行為に係る

  土地の面積が1ヘクタールを超えるものにあっては道路(路 

  肩部分及び屈曲部又は待避所として必要な拡幅部分を除く。

  )の幅員3メートル

イ)その他の行為にあっては土地の面積1ヘクタール

  以上。

2.林地開発許可制度の内容

(1)許可制の対象となる森林

 林地開発許可制度の対象となる森林は、森林法第5条の規程によ

り都道府県知事がたてた地域森林計画の対象民有林(保安林、保安

施設地区及び海岸保全区域内の森林を除く。)です。

  以上。