保安林以外の普通林における林地開発許可制度とは

※森林は、保安林以外の森林(普通林)であっても水源の涵養、

 災害の防止、環境の保全などの公益的機能を有しており、国

 民生活の安定と地域社会の健全な発展に寄与しています。

  このため、普通林の開発に当たってはこうした森林の持つ

 機能が損なわれないよう適正に行うための一定のルールが定

 められています。

   以上。

保安林の思想

 燃料や水資源の供給源として、また、防災機能などを有する森林

の喪失は、文明の喪失にも繋がることから古くから森林の伐採を制

限する法規制が行われてきた。日本では676年に、飛鳥川上流の

南淵山(現在の奈良県高取町高取山)周辺の森林伐採を禁止した例

が日本書記の記述から読み取れる。江戸時代には、岡山藩の熊沢蕃

山が治水のために保安林的思想を打ち出したほか、江戸幕府も16

66年に諸国山川掟を発し、森林の乱開発を戒め植林を促している

   以上。

指定目的達成の手段

   詳細は「森林計画」を参照

 水源かん養保安林~防火保安林については、指定の目的を達成す

るために必要に応じて国、地方自治体は治山事業を実施することが

できる。保安林機能強化の一環として、水源林造成事業の実施や、

森林法第41条による保安施設事業の実施、特定保安林の指定など

がある。保安林には手入れがなされていないなど健全な状態と言え

ないものがある。公益的な働きが低下している保安林については農

林水産大臣が、森林法第39条の3によって特定保安林に指定して

、整備を進める。都道府県知事は、特定保安林内で早急な施業が必

要なものについては要整備森林に指定し、地域森林計画を明示する

。その後、地域森林計画に基づき都道府県知事は森林所有者等の自

発的な施業を勧告する。必要がある場合には治山事業を実施する。

  以上。

保安林の制限

 立木の伐採に関しては都道府県知事への届出(一部については

許可)が必要となる。具体的には、皆伐は皆伐限度面積の公表の

日から30日以内に許可申請が必要となり、択伐は伐採を開始す

る日の30日前までに許可申請し、人工林での択伐は伐採を開始

する日の90日から20日前までに届出する必要がある。間伐に

は伐採を開始する日の90日から20日前までに届出する必要があ

る。家畜の放牧、下草・落葉・土石‣樹根の採取、土地の形質の

変更(掘削、盛土等)については都道府県知事の事前の許可が必

要である。保安林を造成して住宅を建てるなど将来にわたって森

林以外の他の用途に転用する行為は、許可されない。立木の伐採 

後に森林状態に自然回復しない場合は、植栽の義務がある。一方

で保安林の土地の売買には制限はなく市町村長への届出が必要で

ある。立木の伐採の強度や伐採後の植栽の方法等に関しては、保

安林に指定される際、森林毎に要件が定められる。制限に反した

行為をした場合には、森林法第38条に基づく、中止命令・造林

命令・復旧命令・植栽命令の監督処分を行い、森林法第206条

~210条、212条による罰則がある。

  以上。

保安林の特例措置

 保安林に指定されると規制内容に応じて優遇される。森林法第

35条に基づいて、禁伐または択伐の伐採制限が課せられる保安

林については、立木資産の凍結に対する利子相当分の損失補償を

受けられる。固定資産税、不動産取得税、特別土地保有税は非課

税になる。相続税、贈与税は伐採制限の内容に応じ課税額の3~

8割が控除される。一定の条件の下、保安林維持の為に、日本政

策金融公庫から長期で低利に融資を得ることができる。

保安林の解除

 保安林の指定目的が消滅したとき(例:保全対象の集落、農地

が消滅するなど)公益上の理由(例:公共用道路の建設、送電施

設の設置など)が生じたときに限り解除される。この際、必要に

応じて代替施設の設置などを求められることがある。民間企業が

営利目的で解除を行うことは事実上不可能である。

農林水産大臣は、保安林の指定又は解除をしようとするときは、

あらかじめその保安林予定森林都道府県知事に通知しなければな

らない(法29条)

  以上。

保安林の指定

 農林水産大臣または都道府県知事が森林法第25条、25条の

2,27条~33条に基づき保安林として指定する。この場合、

森林とは木竹の生育に供される土地を指し、現時点で生育してい

るか否かは問われない。

  以上。

保安林の面積

 2016年3月現在、重複指定を排除した実面積で1,292万

ha。これは森林面積の48.5%、国土面積でも32.2%に相当

する。指定される保安林の多くは、水源涵養保安林が保安林全体の

71.1%、土砂流出防備保安林が保安林全体の20%を占める。

  以上。

保安林とは

 保安林(ほあんりん)は、水を育んだり、土砂崩れなどの災害

を防止したり、景観や保健教養などの公益目的を達成するために

、伐採や開発に制限を加える森林のことである。目的に合わせて

17種の保安林がある。

①水源涵養保安林

  森林には、降った雨を蓄えて、徐々に河川などに流すように

 する働きがある。

②土砂流出防備保安林

  森林内の地面を、樹木の根と落ち葉や下草が覆うことで、雨

 などによって表土が流されることを防いでいる。また水流によ

 って表土が流された時に、土砂がさらに下流まで流出すること

 を防ぐ。

③土砂崩壊防備保安林

  林木の根が、土や岩を繋ぎとめる物理的な力で、山崩れが起

 こることを防ぐ。

④飛砂防備保安林

  砂浜などから飛んでくる砂を防ぎ、隣にある田畑や住宅を守

 る。海岸の砂地を森林で覆って砂が飛んでいかないようにする

 場合と、樹木で飛んできた砂を遮断する場合とがある。

⑤防風保安林

  風の強い地域で、樹木の幹や枝葉で障壁を作って風に抵抗し

 、風のエネルギーを減殺して風速を緩和することで、被害を防

 ぐ。

⑥水害防備保安林

  河川が氾濫したときに、樹木が障害となって水の流れを弱め

 、また漂流物を堰き止めて水害の被害を軽減する。

⑦潮害防備保安林

  津波や高潮の勢いを樹木によって弱め、被害を防ぐ。また、

 海岸からの塩分を含んだ風を弱め、枝葉によって塩分を捕捉し

 て田畑への塩害を防ぐ。

⑧干害防備保安林

  簡易水道などの、特定の水源を守り、水が涸れることを防ぐ

 。

⑨防雪保安林

  樹木の幹や枝葉によって障壁をつくって、吹雪から道路など

 を守る。

⑩防霧保安林

  森林によって空気の流れを乱れさせることで、霧が移動する

 ことを防ぎ、また樹木の枝葉によって霧粒を捕捉して霧の被害

 を防ぐ。

⑪なだれ防止保安林

  森林によって雪崩の原因となる雪庇ができることを防ぐ。山

 腹斜面で樹木が抵抗して雪が滑り出すことを防ぎ、雪崩の発生

 を防止する。雪崩が発生した時には、森林が障害となって勢い

 を弱め、また被害の少ない方向へ誘導して被害を防ぐ。

⑫落石防止保安林

  樹木の根で岩石を繋ぎとめて固定し、崩壊を防ぐ。また発生

 した落石を山腹で阻止し被害を防止する。

⑬防火保安林

  燃えにくい樹種を配置して防火樹帯をつくって、火災のとき

 に延焼することを防ぐ。

⑭魚つき保安林

  水面に陰をつくったり、流れ込む水の汚濁を防いだり、養分

 の供給などの働きで、魚の棲息と繁殖を助ける。

⑮航行目標保安林

  海岸または湖岸の付近にあって、船舶の航行の目標となる森

 林を保全して、安全に船舶が航行できるようにする。

⑯保健保安林

  森林レクリエーション等の保険、休養の場として、生活にゆ

 とりを提供する。また、空気の清浄や騒音の緩和など生活環境

 の保全にも役立つ。

⑰風致保安林

  名所や旧跡などの趣のある景色を構成する要因となっている

 森林を保存する。

  以上。